研究ノート 宇多津 角打ち文化宣言(1) [研究ノート]
宇多津 角打ち文化宣言
佐藤 竜馬【2009年6月】
■1 日本の角打ち文化
最近はコンビニに席捲された感があるが、つい最近まで街中のあちこちに酒屋さんがあった。ビール1本、お茶1本から配達してくれる酒屋さんは、貴重な存在だった。
しかし酒屋さんは、単に酒を買い、配達してもらうだけの存在ではない。まちの社交場でもあったのだ。「角打ち」という行為を通じて。
「角打ち」とは、「升で酒を飲むこと、酒屋の店頭で酒を飲むこと、金銭を出し集めて宴をすること」だそうだ(『日本国語大辞典』小学館)。
九州や関東では、「酒屋の店頭で酒を飲むこと」の意味で、角打ちという言葉が使われている。関西では「立ち飲み」だとか(以上、北九州角打ち文化研究会のHPより)。なお新潟・三条では鍛冶仕事が終わった後に酒屋で飲むことを「あがり酒」という。
香川ではどうか。県内の酒屋さんで聞いてみたが、「特に言葉はない」「立ち飲みちゃうんか?」など、返事は様々。
まあ、言い方なんぞはどうでもよい。そんな「かたち」ではなく、お店の方の昔話や常連さんの世間話、彼らの話を暖かく包む店構えの方が大事だ。と思っていたが、宇多津・大熊酒店でかけだしの常連になり、取材を進めるうちに、やはりこれは、「角打ち」と呼ぼうという気持ちになってきた。
「角打ち」で、いこう。
■2 角打ちの常連客
香川で角打ちできる酒屋さんは、私が確認した範囲内では9軒ほどある。これらの酒屋さんの魅力は、何と言ってもそこに集う「人」である。
特に常連さんの顔ぶれには、それぞれの店ではっきりしたカラーがある。いま仮に、常連さんのカラーで分類を試みると、
①サラリーマン型 オフィス街にほど近いところの酒屋さん。仕事帰りの会社員や公務員が集う。軽く1、2杯ひっかけてさっそうと帰る常連さんも多い。ワインも充実して、ややライトな雰囲気。高松磨屋町・頼酒店を指標とする。
②ギャンブラー型 競輪場などの近くにある酒屋さん。一戦終えた常連さんが、一日の戦果の話に花を咲かせる。戦場でツキを落としたためか、意外にサッパリして、フレンドリーな方が多い。高松福岡町2丁目・谷脇酒店を指標とする。
③地域住民型 昔ながらのまち中にある酒屋さん。近所の住民が仕事帰りに立ち寄る。お互い見知った仲なので、常に和やかな雰囲気。初心者には近寄りがたい雰囲気もあるが、勇気を出して加われば、あなたも常連。宇多津鍛冶屋町・大熊酒店を指標。
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